パット・メセニー、マイルス・デイヴィスらのジャズ、スティーリー・ダン、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランらのロックなど、愛する音楽 + "α" を日々の糧にして・・・

« 緊急! パット・メセニー・グループ最新ライブ画像を入手! | メイン | 必見! 愛のカフェ・オーレの真実!(笑) »

2005年03月02日カテゴリー:パット・メセニー

パット・メセニー on N.Y.Times (2):Seven Steps to Heaven

さて、好評連載中(?)のパット・メセニー・インタビュー on N. Y. Times。

第二回目の今日はこちら、来ました我らが帝王! マイルス・デイヴィスの登場です。

【Miles Davis:The Complete Concert 1964】
Miles Davis / The Complete Concert 1964: My Funny Valentine + Four and More
パットが取り上げたのは1964年のライブ、名盤中の名盤「Four and More」から「Seven Steps to Heaven」です。
(最近は同日の「My Funny Valentine」とセットになって販売されています)

記事中にアルバムタイトルは明示されていないのですが、「1964年のライブ」ということでこのアルバムと断定しました。

オリジナルの「Seven Steps 〜」は1963年でライブでもないし、64年のライブでブート以外にこの曲が収録されているアルバムは今のところないようですので。

ということで、少々前置きが長くなりましたが第二回、パットが帝王マイルスから聴き取るものは何か、ご覧下さい!

--------------------------------------------------------------------------------

消えない印象

次に我々はマイルス・デイヴィスの「Seven Steps to Heaven」を聴いた。ハービー・ハンコック、ジョージ・コールマン、ロン・カーター、そしてトニー・ウィリアムスの「デイヴィス・クインテット」による、64年のライブパフォーマンスだ。

彼らの演奏はとても速く、そして自信に満ちあふれている。たとえ即興演奏のコーダの部分であってもだ。トニーのドラムソロは砲撃のようにけたたましく、マイルスのソロはクールな傲慢さをたたえている。

「これは私が初めて手にしたレコードなんだ」と、メセニーはまず切り出した。

「11歳のときだった。兄のマイクは素晴らしいトランペッターで、ちょうどジャズに興味を持ち始めた友達が彼の回りにいたんだ。マイクがこのレコードを家に持ってきた。

「私はいつもこう言われ続けてたんだ -- お前はジャズを本気で学ばなくちゃダメだ。そしていいジャズを聴き分ける耳を育てなきゃいけない。それからあれしてこれして -- といった、その手のあらゆる小言をね。

「でも11歳の自分は、このレコードを30秒も聴かない内に -- そこでパットはパチンと指を鳴らした -- 永遠にジャズの虜になってしまったのさ!」

「自分はハービーのことはとても良く知っている。トニーのこともだ。彼らに一度、あのライブの晩、実際何があったのか聞いてみたことがあった。それまでで最低のギグだった、と言ってたよ。

「でもたった今トニーの演奏を聴いたよね。ポール・ブレイは新たな地平を切り開いたけど、全く同じ方法で、トニーもそれをやってのけたのさ。

「 "それ" というのはこんなふうに、信じられないくらいに新らしい、タイム感のとらえ方のことだ。この時期に起こったことのすべてを要約していると言ってもいい。世界が別の次元へと動き始めたんだ。」

メセニーはここで話の矛先を変えた。

「自分が話そうとしていたのは、マイルスのソロのことだ。マイルスのソロは、全く新たに発明された言語なんだ。その言葉遣いと文法は、今や私たちがジャズと見なしているすべてのことを、完璧に取り揃えることになった言語だ。

「当時は、今のようには見なされていなかった。だからもし君がこの手の和音を見たら、きっと和音ではなく音符の連なりとして演奏しただろう。これは簡単な曲じゃないんだ。ブルースでやるような演奏じゃあない。いくつかのキーを動き回った後に、今度は扱うのに手こずるような、奇妙な動きをするブリッジに入っていく。でもマイルスは、それをこんなに複雑かつヒップなやり方で処理している。

「それはメロディーであって、すべてを結合させたものなんだ。フレーズ単位を基本にして、一つのアイデアが別のアイデアへと繋がっていく、そういう方法なんだ。」

マイルスは、すべての音符やフレーズが非常にスウィングしてることを暗に伝えるために、オリジナル曲以上にゆっくりなテンポにして、自分の想像力をスローダウンさせる必要があったんじゃないだろうか、と私は言ってみた。

メセニーは深くため息をついた。

「いいかい、スウィングという言葉はもう政治的なスローガンのようなものなんだ。ここで私が使っているスウィングという言葉、そこに込めているのは、今話した "繋がり" ということ、アイデアの連結ということなんだ。

「でも、音楽というのは、人と、その人が生きている時代をも連結させるんだ。その時代のすべてを象徴するようなサウンドを、ミュージシャンはいかにして明示することができるか --

「その明示の方法というのも、音楽の連結ということの別の側面であり、自分にとってはそれこそがスウィングなんだ。そしてそれは、ジャズとは全く何の関係もないんだよ。
(ここでメセニーは、ジャズという単語を「ジーヤーアズ」とアクセントをつけて発音した)

「スウィングとはある種の音質のようなものだろうか? それは人間の相互理解のうちにあるもの、人々の話し方や動作にあるものなんだ。スウィングが及ぼした影響は、建築や文学の中にも見い出せるくらいさ。」

演技にも?(と私は尋ねた)

「そう、演技にも。それに冷蔵庫を修理するときとかにもね。」
--------------------------------------------------------------------------------

いやー、完璧に私の英語力を超えていました(笑)
特に最後の方の段落はかなり難しく、未だにきっちりと理解できておりません(^^;

多少の読み間違い、勘違いは確実に存在すると思いますが(笑)、大意は外していないと思います。

マイルスを離れてパットの「スウィング観」が語られているところが、個人的には非常に面白かったです(訳も一番キツかった(^^;)

別のインタビューで「デビュー当時から、いわゆるジャズというフォーマットへの反抗心というのはあった」と語っており、その辺がハッキリ出ている気がします。

また「時代のすべてを表現するサウンドをいかに明示するか」というあたりは、まさに最新作「The Way Up」のコンセプトと重なるところなのだろう、とも思いました。

それにしてもシンドかった(笑)
誤訳の指摘、お待ちしております m(__)m

でも「オメーどんな脳ミソしてんだゴルァ!」みたいな言い方でなく、できれば優しく、それなりの節度と配慮をもったお言葉でお願いいたします(笑)

ではまた次回も懲りずにお付き合いください(^^;

参考:原文記事
"The New York Times - Listening to CD's With: Pat Metheny: An Idealist Reconnects With His Mentors"

バックナンバー:
パット・メセニー on N.Y.Times (1):All The Things You Are

続き:
パット・メセニー on N.Y.Times (3):Passarim

パット・メセニー on N.Y.Times (4):Fugue No. 22 in B-Flat minor

パット・メセニー on N.Y.Times (5):If You Could See Me Now

投稿者 Kota : 2005年03月02日 12:07
人気blogランキング111クリックして下さるとウレシイです(^^ゞ
←できたらこちらもクリックよろしくですm(__)m

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://redsky.under.jp/cgi2/mt/mt-tb.cgi/120

コメント

翻訳ご苦労様です。

前回の訳文も興味深く読ませて頂きました。

それにしてもパット師匠の「SWING」観には参りました。
最後のお言葉が
「冷蔵庫を修理する時とかね」なんていわれた日にゃあ・・・。
凡人にはあまりに哲学的過ぎて理解不能でございます・・・。

大変な作業だとは思いますが、第三回の訳文も期待しております~。

投稿者 h2 : 2005年03月02日 17:41

こちらにもちょっとだけ…

まだ風邪完治していないのですが、少しは何かしないといけませんしリハビリかねて、少し書き込みさせてもらっています。

いやー、今回の翻訳は大変だったことと思います。かなり難しい内容でしたものね。

しかもH2さんもおっしゃっていますが、最後の「冷蔵庫を修理する時とかね」には、私も参りました(笑)

で、イマージナリィデイの絵文字の中身を思い出しました(笑)
「そのとき我々は音楽そのものだった…」みたいな

私は、形而上学や観念的なことって結構好きなので、面白いのですが、でも、英語がだめなので、読ませていただけてほんと楽しませてもらっています。

大変でしょうが、次も期待しております。

では、また!

投稿者 mac : 2005年03月02日 22:07

もう本当に…大変な訳をご苦労様でした!
こうして日本語に変換されたものを読んでいても難しいものを、よくも訳されるものだとほとほと感心させられます!

それにしてもFour&Moreですか。We Live HereのインナーにPatのFavorite Recordsとして紹介されていましたね。

私にかろうじて理解できるのは、「あのMilesの演奏は、当時という『時代を表現』している完璧な数少ない例なんだろうなあ」ということです。
私は、あのクインテットの演奏を聴くといつも鳥肌が立つのですが、それは「感動」よりもっと強烈な「畏怖」みたいな感情のような気がしています。「鬼気迫る」というか…ざっくり言うと「おっかない!」カンジなんですよ(笑)。

投稿者 ガラ玉 : 2005年03月02日 22:23

> h2さん

こんばんは!

> 翻訳ご苦労様です。

いえいえ、確かに「シンドイ~」とか書いてますが、結局自分が好きでやってることですんで、そんなお言葉もったいないでございます(^^;

> 「冷蔵庫を修理する時とかね」なんていわれた日にゃあ・・・。
> 凡人にはあまりに哲学的過ぎて理解不能でございます・・・。

私ごときが翻訳を語るのもおこがましいですが、翻訳の難しさというのは、「英語がわからないから難しい」というのと、「英語はわかるんだけど言ってることがわからない」という二種類があると思うんです。

で、これは正しく後者。訳は間違いなく「冷蔵庫の修理」なんですよ(笑)
「And refrigerator repair.」こんだけですから(^^;

「だからなに?」って感じですよね(笑)

> 大変な作業だとは思いますが、第三回の訳文も期待しております~。

ありがとうございます。すでに半分泣き入ってますが(笑)、頑張ります。

> macさん

三度の書き込み、ありがとうございます!

> リハビリかねて、少し書き込みさせてもらっています。

書き込みは大歓迎ですが、立て続けに三発もレス頂いて、逆に悪化させないかと心配です(笑)

> 「そのとき我々は音楽そのものだった…」みたいな

あ~、ありましたよねぇ~(笑)

あと一番ワケわかんなかったのが、As Falls Wichita~ でナナが叫ぶ数字の意味、あれをどこかでライルが「簡単な話さ!」と解説していたのですが、最初っから最後まで全く意味がわかりませんでした!(笑) 英語じゃなくて日本語訳だったんですけどね(笑) コルトレーンがどうのこうの言ってたんですが・・・
もう言語そのものが謎でした(^^;

私も思想、哲学の類は嫌いではないんですが、やっぱこれはムズいッス(笑)

とりあえず雰囲気だけでも感じ取っていただければ幸いです。

> ガラ玉さん

こんばんは! レスどうもです!

> もう本当に…大変な訳をご苦労様でした!
> こうして日本語に変換されたものを読んでいても難しいものを、よくも訳されるものだとほとほと感心させられます!

いえいえ、とんでもないです(^^;
たぶんもっと私がきちんと理解できていれば、もっと平易な日本語にできるはずなんですけどね。

しかしこれは英語だけじゃなくて音楽のこともわかってないと訳せないインタビューだな、とは思います。

ちょっと脱線しますが、ずいぶん前、ラリー・カールトンが日本のFM番組でインタビュー&生演奏をやって、確かスクウェアの安藤さんがインタビューアーだったと思います。

通訳を介していたんですが、「どうやったらあなたのように歌うような、表現豊かなギタープレイができるんですか?」みたいな質問をしたんですよ。

カールトンの返事を通訳が「こう、ギターの弦を詰まらせるような、締め付けるような感じで演奏することが大事だ、ということです」と言って、安藤さんが「弦を詰まらせる、ですか。うーん、なんだか難しそうですねぇ」と相づち打ってましたが・・・

あの、通訳さん、choking=詰まらせる、じゃなくて、そのままチョーキング、ですから!(笑) 逆に訳されたらわかんねーッスから! と一人でラジオに向かってツッコミ入れました(笑)

> 私にかろうじて理解できるのは、「あのMilesの演奏は、当時という『時代を表現』している完璧な数少ない例なんだろうなあ」ということです。

パット風に言えば、64年という「今」を余すところなく切り取った音、ということなんでしょうね。私も生まれてないのでよくはわかりませんけど。

> 私は、あのクインテットの演奏を聴くといつも鳥肌が立つのですが、それは「感動」よりもっと強烈な「畏怖」みたいな感情のような気がしています。「鬼気迫る」というか…ざっくり言うと「おっかない!」カンジなんですよ(笑)。

それ、なんかわかる気がします。確かに名演ですけど、「感動」という言葉だけでは収まらないですよね。確かに「鬼」という字がよく当てはまる気がします。

投稿者 Kota : 2005年03月02日 23:26

お疲れ様です!

難解ですよね。訳文が悪いわけではなく原文読んでも難しいです。私は音楽の基礎がないのである部分は全く分かりません(泣)

件のライヴのtsはジョージ・コールマンではなかったですか?Wショーターではなくて?

「ジョージ・コールマン、テナ・サクソフォン・・・」というアナウンスがありましたよね?
間違ってたらすみません。コンプリート2枚組と「フォア&モア」「マイ・ファニー~」と持っているのですが手元にないので。

投稿者 longrow1967jp : 2005年03月03日 13:16

longrow1967jpさんこんばんは。

> 難解ですよね。訳文が悪いわけではなく原文読んでも難しいです。

お言葉ありがとうございます。
正直訳文が悪い部分もありますが(^^;、原文が難しいのは確かです(笑)

> 件のライヴのtsはジョージ・コールマンではなかったですか?Wショーターではなくて?

さすが!
おっしゃるとおりです(^^)

後日原文の末尾にも「お詫びと訂正」が掲載されていたのをすっかり忘れていました(^^;

今から修正しておきます。
ありがとうございました!

投稿者 Kota : 2005年03月03日 23:02