パット・メセニー、マイルス・デイヴィスらのジャズ、スティーリー・ダン、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランらのロックなど、愛する音楽 + "α" を日々の糧にして・・・

« マーカス・ミラー写真撮影&ブルーノート・ライブ! | メイン | マーク・ノップラー:事故から生還して得た新境地 - CNN.com »

2005年03月07日カテゴリー:パット・メセニー

パット・メセニー on N.Y.Times (5):If You Could See Me Now

ついに最終回を迎えましたパット・メセニー・インタビュー on New York Times。

最後は偉大なる巨人、ウェス・モンゴメリーです!

【Wes Montgomery With Wynton Kelly / Smokin' at the Half Note】
Wes Montgomery With Wynton Kelly / Smokin' at the Half Note
取り上げた曲は「If You Could See Me Now」。美しいバラードナンバーですね。

今回も前回同様演奏面からの言及ですが、解説の言葉の端々から、パットのウェスへの思いが溢れ出ています。

ちなみに「Smokin'〜」は皆さんご承知のようにVol.1 と2、いわゆる青版、赤版がありますが、この曲はどちらにも収録されており、また記事中にも1と2への言及はなかったので、とりあえず青版の画像を使いました。

では最終回、短めですがじっくりとご覧下さい。

----------------------------------------------------------------

演奏の一瞬一瞬を深く考慮すること

このマラソン・セッションが2時間を過ぎたところで、メセニーは開始時のように生き生きとしてきた。休憩を挟むことを好まず、スナックを取り出して語り続けた。

インタビューも終わり近くになり、私たちは余った時間の中で、メセニーが常に好んできたギター・ソロの話をした。ウェス・モンゴメリーの「If You Could See Me Now」のコーラス部分と、曲の前半に登場するソロである。ウィントン・ケリーとウェス・モンゴメリーが1965年に録音した、「Smokin' at the Half Note」の中の一曲だ。

まだ若いミュージシャンだった頃、メセニーはウェスのようにプレイしようと、ありとあらゆることにチャレンジした。ピックを使わず、オクターブ奏法でインプロヴィゼーションをした。

「でも、14か15歳の時に」と彼は言った。

「自分がしていることはウェスへの冒涜だ、と気づいたんだ。だって彼のしていることは彼そのものであって、私から生まれ出たものじゃない。

「私はミズーリ州のリーズ・サミットで育った。ニューヨークじゃない。私は白人で、黒人ではない。私はカントリー・ミュージックしか流れていないような小さな町の出で、そういう音楽が大好きだった。そしてそれらに対して、きちんとした響きとか、コードの特性とか、いろんな種類のヴォイス・リーディングとか、そういったものを付け加えようと必死に取り組んでいたんだ。」

彼はウェスのソロ部分まで早送りして一度聴き、さらにもう一度ソロを聴きながら語り始めた。

「出だしのメロディーは信じられないくらい力強いね。」 -- ソロの最初の4小節で彼はこう言った。ウェスが3連譜のパターンを演奏する5小節目から8小節目に入る前である。

「しかも最初のフレーズはフル・ボリュームの演奏だ。できる限りの大声で話をしているかのようだ。でも、ここからとてもソフトになる。まるでグレン・グールドのようさ。すべての音符の音量がすべて違っているんだ。」

2コーラス目で、バンドはより激しくスウィングし始めた。二回目のAセクション部に入ると、ウェスはパワフルで粗野なフレーズを演奏し始めた。

「ウェスが詰め込んだブルースの要素が全部ここに出ている。」とメセニーは言った。

各セクションが終わり近くになるたびに、ウェスはテンション・ノートを用いて、次のパートの始まりを告げるかのような演奏をした。そのたびに、メセニーは恍惚として聴き惚れていた。

「彼は全く新しいものを組み上げて、それを広めていったんだ。それからここ!」 -- と2番目のコーラス部分で声を上げ -- 「クォーター・チョーキングだ。彼は時代の2段、3段も上を行き、そして我がものにしたんだよ。」

曲が終わり、メセニーは言った。「短いソロを取るのは本当に難しい」と。

「8小節のソロのようなヤツさ。演奏する一音一音、すべての音に明確な意味がなければいけない。それはもうバッハの曲のようなものさ。」

----------------------------------------------------------------

さて、最終回の第5回、いかがだったでしょうか。

メセニーが実際にウェスを聴きながら、自分の思いのたけを語る様がよく描写されていたと思います。この訳がその雰囲気を伝えていればいいのですが(^^;

メセニーがウェスを徹底的にコピーしていたことと、さらに自分のプレイからウェスらしさを払拭させることにいかに努力したか、も結構有名な話ですよね。ライルもビル・エヴァンスの影響とそこからの脱却についてどこかで語っていた記憶があります。

人の真似をすることは、却ってその人への冒涜になる -- これはメセニーがよく口にもする信条ですが、14〜15歳でそれに気づいた、ってのがやっぱり恐ろしいですね(^^;

私の記憶が確かなら、メセニーがギター始めたのは11歳でしたよね。3年ぐらいでウェスをコピーしまくってさらにそこから脱却を図るなんて、やっぱり天才なんでしょうね、この人は。

ということで長らくご愛顧頂きました(?)パット・メセニー・インタビュー on New York Times、これにて一巻の終了となりました。ヘタレかつヤバゲな訳にも関わらずお付き合いくださった皆さま、どうもありがとうございました m(__)m

ちょっと終わっちゃって寂しいという気持ちと、ネタがなくなって困る、という気持ちがありますが(笑)、公式HPにもまだネタはあるでしょうし、実は今回のツアーのライブ・レポートが結構アメリカ各地の地元紙に上がってるんですよ。日本公演をこの目で見るまでは記事にも目は通しませんが(^^;、いずれそれらもご紹介できればなあと思っています。

来月はいよいよ来日ですね。それまで灯を絶やすことなく(笑)、いろいろと盛り上がっていければと思います。では!

参考:原文記事
"The New York Times - Listening to CD's With: Pat Metheny: An Idealist Reconnects With His Mentors"

バックナンバー:
パット・メセニー on N.Y.Times (1):All The Things You Are

パット・メセニー on N.Y.Times (2):Seven Steps to Heaven

パット・メセニー on N.Y.Times (3):Passarim

パット・メセニー on N.Y.Times (4):Fugue No. 22 in B-Flat minor

投稿者 Kota : 2005年03月07日 12:23
人気blogランキング111クリックして下さるとウレシイです(^^ゞ
←できたらこちらもクリックよろしくですm(__)m

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://redsky.under.jp/cgi2/mt/mt-tb.cgi/127

コメント

初めまして

linkinparkファンです。
日本の音楽がやや深みとこくに欠けるのは、精神世界の観点が少ないからだと思います。
私は甘く危険な冥想ブログやっています。興味ありましたらどうぞ。

投稿者 湖南 : 2005年03月07日 21:18

Kotaさん、翻訳、本当にお疲れさまでした。
日本の音楽誌だとなかなかここまで踏み込んだ内容のインタビューって少ないと思います。
このインタビューで取り上げられた音楽、まだ未聴なものもありますので機会があれば聴いてみたいと思います。

あー、英語、、勉強しよ。。。

投稿者 h2 : 2005年03月08日 00:58

湖南さん初めまして。コメントありがとうございます!

> linkinparkファンです。

Linkinparkですか。えーっと、名前は聞いたことあるんですが、あまりちゃんと聴いたことなくて(^^; すいません。

> 日本の音楽がやや深みとこくに欠けるのは、精神世界の観点が少ないからだと思います。

私自身はあまり精神世界とかのことはよくわからないので、それが音楽にどう影響しているか、とかはちょっとわからないですが、私はまず音楽は何かのメタファーや表現の手段としてではなく、それ自身が目的である音楽を聴きたい、と思っています。

またよろしかったらお立ち寄り下さい。では!

投稿者 Kota : 2005年03月08日 01:06

h2さんこんばんは!

あとでそちらにお邪魔するつもりでした(^^;

> 日本の音楽誌だとなかなかここまで踏み込んだ内容のインタビューって少ないと思います。

そうですね。このインタビューは、互角とまでは行かなくても、とりあえずインタビューアーがメセニーと土俵にのって会話をしよう、という意気込みがあるように感じました。

日本(だけではないですが)目にした大方のインタビューは、やはり聞き手と話し手、という、一種主従の関係のままだったような気がします。

> このインタビューで取り上げられた音楽、まだ未聴なものもありますので機会があれば聴いてみたいと思います。

私もそうですが、とりあえず昨日ジョビンをゲットしました。やはりすごくいいアルバムでした。オススメです(^^)

> あー、英語、、勉強しよ。。。

そしていずれh2さんがこのインタビュー訳の改訂版を書いて下さることを期待しております(^^)

では、あとでそちらにお邪魔します!

投稿者 Kota : 2005年03月08日 01:14

すごい ここまでよく訳しましたね。
NYタイムスは使ってる単語も特別で、文法も凝っているので、たいへんだったでしょう。
しかも取り上げられたアルバムをちゃんとスキャンしているので、記事を読んだだけでは伝わらない部分もフォロー。
お疲れ様。

投稿者 Emi : 2005年03月08日 02:19

Emiさんこんにちは!
お越し下さり、またコメント頂きましてありがとうございます!

> すごい ここまでよく訳しましたね。

ありがとうございます(^^;
褒め言葉には敏感な人間なので非常にウレシイです(笑)

EmiさんはNY在住なのですか?
新聞社勤務と他のサイトでお見かけしましたが、特派員ということでしょうか?
ともあれ、そういう現地&英語にお詳しい方にこう言っていただけると素直に嬉しく、今後さらに図に乗りそうです(笑)

> NYタイムスは使ってる単語も特別で、文法も凝っているので、たいへんだったでしょう。

大変は大変でしたが、それはNYタイムス云々以前の、私の英語力のなさゆえかと(^^;

きっと背筋も凍るような誤訳があったはずですし(笑)、意訳でごまかしたところも多々あり、至らない点だらけです。

取り上げられたCDのスキャンは、原文読んでいるときから「欲しいなぁ」と思っていたので、自分もここで追加できてよかったと思っています。言及して下さってウレシイです。

ではでは、またよろしかったら遊びにきて下さい。
ありがとうございました!

投稿者 Kota : 2005年03月08日 10:10

「Wes Montgomery With Wynton Kelly / Smokin' at the Half Note」の「If You Could See Me Now」ですか!

仕事場にCDがあるのでじっくり聴きなおしたくなりました!ヴォリューム云々の話は前回のダイナミクスの話に通じていますよね。

Wモンゴメリーは現役当時、グルーヴ感や独特の音色が、評論家から酷評されたそうですが、後世、トップ・ギタリストからこれだけの評価をされているんですね。

・・・素晴らしい企画の素晴らしい翻訳、お疲れさまでした。有難うございました。天才的音楽家が専門的な話をする部分は今のところは難解で分からないのですが、それでもそれぞれの音楽や曲についてPMが感じていることや彼の音楽に影響を及ぼした雰囲気を感じることができました。

私はMデイビス、ACジョビン、Wモンゴメリーの音楽には、PMやPMGの音楽とはまったく別の方向から入ってきたので、感じ方は違うにしても、取り上げられたことに、なんだかとても嬉しい感じがしました。

投稿者 longrow1967jp : 2005年03月08日 14:17

longrow1967jpさんこちらにもどうもです(^^)

> ヴォリューム云々の話は前回のダイナミクスの話に通じていますよね。

ですね!
私も改めて聴いてみましたが、確かにすごい音量差でした。

> Wモンゴメリーは現役当時、グルーヴ感や独特の音色が、評論家から酷評されたそうですが、

え、そうなんですか! それは初耳です。
まあロックギターで言えばジミヘン級の革命者でしたから、初期には反発もあったのかもしれませんね。

> ・・・素晴らしい企画の素晴らしい翻訳、お疲れさまでした。有難うございました。

いえいえ、恐縮です。
基本的に好きでやったことですから(^^;

> 私はMデイビス、ACジョビン、Wモンゴメリーの音楽には、PMやPMGの音楽とはまったく別の方向から入ってきたので、感じ方は違うにしても、取り上げられたことに、なんだかとても嬉しい感じがしました。

あ、私もです(^^)
まあジョビンとウェスについては以前から言及していましたが、マイルスについて長く語ることはあまりなかったと思います。

公式のQ&Aには「Bitches Brew」について語っているのがあるんですが、確か一言二言「傑作以外の何物でもない!」ぐらいしか言ってないんですよ(^^; ちょっと検索してもうちょい何か言ってたらまたご紹介しましょうかね。

ではでは、最初から最後までお付き合い下さってありがとうございました!

投稿者 Kota : 2005年03月08日 23:04