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2005年06月02日カテゴリー:パット・メセニー
ライル・メイズ:ライル・メイズ
ミュージシャン名がそのままタイトルになってるアルバムってよくありますが、それをここで紹介するのは初めてです。紹介してみて、記事のタイトルが結構おマヌケになる、ということを知りました(笑)
ということでライル・メイズの「ライル・メイズ」です(笑)
【Lyle Mays / Lyle Mays】
ライル・メイズはソロアルバムをこれまでに4枚リリースしており、私はどれも好きなんですが、中でもよく聴くのが「Solo」というピアノソロによる即興集と、この「Lyle Mays」です。
(しかし「Solo」ってのも記事タイトルにしたらちょっと間が抜けて見えそうだなぁ(^^;)
このアルバムが一番PMGサウンドに近いと思うので、まだライルのソロを聴いたことのないPMGファンの方は、ここから入るのも手だと思います。
ということでサラッと各曲に触れてみたいと思います
1. Highland Aire
出だしから爽やかなメロディです。初期PMGの香りがありますね。やはりPMGとはパットとライルのバンドなんだ、と改めて思わされます。そしていつものウインド系のシンセ・サウンド。これが出るとやっぱり嬉しくなってしまいます(^^)
ライルはどうしても「理知的で硬質」という印象があり、彼の「Solo」というアルバムはそういう側面がよく現れていると思うんですが、これはもっと伸びやかかつ軽やかでいいですね。
ギターはビル・フリーゼル。フリーゼルっぽいあの独特の空間サウンドは出ませんが、音色やビブラートはビルフリのそれです。また途中軽快でシャープなカッティングも聞かせます。こういうのはやはりPMGでは聞くことができませんね。「ジャズ」よりは「フュージョン」という印象があります。
やはりこれはパット抜きの「PMGサウンド」という気がします。パットのソロ作品が時にPMGからかなり逸脱することを思うと、この対比、ライル一人でもPMGっぽい、というのはちょっと面白いというか、いろいろ示唆に富んでいる気がします。
エンディングにはおまけっぽくリアルなバグパイプサウンドが入っています。メロディの元ネタはケルト・ミュージックなんだよ、というライルの「ネタばらし」のようで、思わずニヤッとしてしまいます。やっぱりライルはお茶目さん?(笑)
2. Teiko
ティンパニ(?)を使った雄大で荘厳なイントロ。もしかして「Taiko」の間違いかと思ったんですが(笑)、これは日本の女性の名から取った、というのをどこかで読んだ記憶があります。
SE風のサウンドとシーケンシャルなパターンをバックに、やはりどこか東洋風の雰囲気が漂います。イメージ的には日本というよりは、東南アジアなどの湿度の高い亜熱帯系の海岸から立ち昇る朝日、という感じがします。途中のリズム隊がお休みするシンセパートは、やはり「雅楽」っぽさもありますが。やっぱり西洋人から見ると、日本も東南アジアも「東洋」とか「アジア」でひとくくりになっちゃってるんでしょうか?(笑)
曲調は違いますが、要素としてはこれが後に「Imaginary Day」で再度復活してきたんじゃないか、という気もしないでもありません。
FMシンセ系のキラキラサウンドによるメロディーは、なんか当時の時代を感じさせますね(^^)
3. Slink
ちょっと拍子がわかりにくい変拍子系の曲。
といっても「難解」とか「ノリにくい」ということが全くなく、自然に聞かせてしまうのはさすがPMGの片棒です(^^)
いわゆる「息継ぎ」のないメロディーで、グ~ッと引っ張られてしまう心地よさがあります。クールさとシリアスさの混じったカッコイイ曲です。
でもってこういう「複雑系」にまたビルフリがよくマッチするんですよね(笑) 途中のビリー・ドルーズのサックス・ソロのパートも「バンド一丸となって」という感じがいいですね。
ライブでやったら絶対盛り上がる曲ですね!
4. Mirror of The Heart
今度は打って変わってアコースティック・ピアノ・ソロによる美しいバラード。
叙情的な曲ですが、単に甘いということでなく、「ライル独自の叙情性」を感じさせます。
私はライルのピアノを聴くと、「氷の彫刻」を思い浮かべることがあります。透明で美しく澄んでいて、人の手が細やかに入っていて、そしてどこかひんやりとしたものを感じさせる。でもそれは不快な冷たさではなく、ほてった体の熱をスッと奪って落ち着きを取り戻させてくれるような、そんな感触です。
5. Alaskan Suite:
Northern Lights
Invocation
Ascent
「アラスカ組曲」ということで、まずは第一章にあたる「Northern Lights」。オーロラです。
ミニマル風のシンセをバックに、マーク・ジョンソンのウッドベースとライルのアコースティック・ピアノが少しづつ絡み合っていきます。明確な形を持たず、思うがままに音が流れていく様はまさにオーロラのそれであり、同時に後に続く曲を想起させる、「序章」らしいオープニングです。
続いて風のようなSEとストリングスをバックに、ウインド系シンセが荒涼とした風景を描き出す「Invocation」。
人を簡単には寄せ付けない、厳しい自然に囲まれたアラスカの大地を見事に表している気がします。タイトルは「祈り」という意味。圧倒的な自然と人間との対比が思い浮かびます。オーロラが消え、暗い夜の静寂の中で短い日の光を待望しているのでしょうか。
そして曲は一変。しっかりとしたリズムがストーリーを展開させ、サックスのメロディーが緊迫感を高めていきます。そしてビルフリのディストーション・ギターとナナのパーカッション&ヴォイスがさらにドラマを盛り上げていきます。
ライルのピアノは時に明るさを見せつつ、曲を大円団へと導いていきます。「Ascent」。太陽が昇っていくその様を描いているのでしょうか。遠い地平線の彼方から徐々に、小さな光が上空へと昇り、空と大地が刻々と変化していく。ひとときの自然のドラマと、それを見つめる人間の姿が思い浮かびます。
6. Close to Home
ケルトにアジアにアラスカと、このアルバムも初期のPMG作品同様「旅」や「移動」がサブテーマとして存在しているようです。
そしてラストは「Close to Home」。帰還、旅の終わりです。
ハッキリ言って、これは名曲です。PMGのアルバムに入っていたら、PMGの代表曲になっていたと思います。まさにPMGらしい、美しいメロディ。この曲や「Travels」「Dream of The Return」そして「Letter from Home」など、PMGはこういう郷愁を感じさせる曲を書かせると本当に美しく素晴らしいですね。やはりツアーで一年の半分以上世界を回っている生活が、こういう情感を強く育むのでしょうか。これもいつかライブでぜひ聴いてみたい曲です。
ライルの他の作品には、PMGをあまり感じさせない、正しく「ソロ活動」という名にふさわしいアルバムもありますが、これは比較的PMGに近い作風だと思います。というよりも、先に書いたように、ライルがいなければPMGにはならないということを、逆説的に表している作品のように、私には思えます。
特にPMGファンではない人にも、そしてPMGファンにもぜひ一度聴いて頂きたいアルバムです。
投稿者 Kota : 2005年06月02日 22:59
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Lyle Mays / Lyle Mays
連休中に聴き返していた。今さらですが。
このアルバムはPMGがFirst Circleを録音した翌年にお馴染みのパ... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年06月04日 17:55
コメント
Kotaさんおはようございます。
ライルのソロは、いつだったか「solo」を購入し、2回3回聴いて、マイお蔵に入りっぱなしだったのですが...、もう一度聴いてみます。あれは、ボクにはちと難しすぎた。。。
投稿者 sekkie : 2005年06月03日 11:18
sekkieさんこんにちは、いつもコメントどうもです!
> ライルのソロは、いつだったか「solo」を購入し、2回3回聴いて、マイお蔵に入りっぱなしだったのですが...、
お気持ち、わかります(笑)
ほとんどの曲が即興ですからね、ちょっとツライものが確かにあるとは思います(^^;
でも慣れてくるとあれはあれで面白いと思いますよ。やはりPMGとの接点がちょろちょろ見えたりしますし、あれがもうちょい既存曲を含んでいたら、ライル版の「One Quiet Night」だったろう、と思っています。いずれこのアルバムも取り上げたいと思います。まあそう言ってそのまま、っていうのがいっぱいありますが(^^;
ではまた!
投稿者 Kota : 2005年06月03日 12:30
こんばんは。
このアルバム私もレコードで持っています。
もう何十年前に買ったんかなぁ?(笑)
でも私もsekkieさんと同じく数回ほどしか聴いていませんでした。^^;
まだほんとに若い頃(ROCK小僧だったんで)に買ったんで
良さがなかなか分からなかったと思うんですが、
今久しぶりにレコード聴きいてみたら、いやぁ~いいですわぁ!
今なら良さが分かる!(笑)
投稿者 KAME : 2005年06月03日 20:00
KAMEさんいつもコメントありがとうございます!
> このアルバム私もレコードで持っています。
ぬおおお、そりゃ凄いっすねぇ!
> 今久しぶりにレコード聴きいてみたら、いやぁ~いいですわぁ!
> 今なら良さが分かる!(笑)
こういうのってウレシイですよね(^^)
ちなみに私、Offrampが出たばっかの時に一度聴いたことあるんですよ。これがメセニー初体験だったんですが、当時は私もRock小僧だったので、「ギターにディストーションがかかってない! ダメじゃん!」とそれだけの理由で速攻却下でした(笑)
あの時からハマっていればもっと素晴らしいライブ人生が送れたはずなんですが(^^;;;
ではまた!
投稿者 Kota : 2005年06月04日 14:37
kotaさんこんにちは。
Soloは難解な部分もありますが、何度か聴いていると音楽的なメッセージが伝わってくる気がしてきませんか。あとラストは心に染み入りますよね。
私はライルのソロ4作の中では1stをよく聴きます。2ndもライルの個性が溢れていて他では聴けないサウンドだと思います。
いっしょにレビュー書きましょうか?(笑)
投稿者 tar_ks : 2005年06月04日 18:08
tar_ksさんこんばんは!
> Soloは難解な部分もありますが、何度か聴いていると音楽的なメッセージが伝わってくる気がしてきませんか。
なるほど! わかる気がしますね(^^)
> あとラストは心に染み入りますよね。
あのラストも名曲ですよねぇ! 私も大好きです!
> いっしょにレビュー書きましょうか?(笑)
ああ、そういうのも面白い試みですね!(^^)
いつかやってみたいですねぇ! お互い同じアルバムのレビューを同じ日に出す、っていうのは面白いかも(^^)
まあ正直tar_ksさんの見事な評と並ぶのは非常に私にとっては致命的ダメージかもしれませんが(笑)、面白そうな気はします。
tar_ksさんも今なかなかお時間がなくて大変なようですが、私も同様ちょっと手一杯なとこがあるので(^^;、多少時間を取ってやってみましょうか?
改めて相談しましょう。ではまた!(^^)
投稿者 Kota : 2005年06月05日 22:37
close to home、いいですよね。私も大好きな曲のひとつです。一時期PMGのライブではこの曲(の原曲らしきもの)をやっていたことがあるそうですが、お蔵となってしまい、後にライルのアルバムで日の目を見たそうです。
投稿者 coyote : 2005年06月12日 13:15
coyoteさんこんばんは!
私の記憶違いでなければたぶん「初めまして」だと思うのですが・・・違ってたらすいませんm(__)m
> close to home、いいですよね。私も大好きな曲のひとつです。
いいですよねぇ(^^) これは本当に「大好き」と言える曲ですね、私も。
> 一時期PMGのライブではこの曲(の原曲らしきもの)をやっていたことがあるそうですが、お蔵となってしまい、後にライルのアルバムで日の目を見たそうです。
えっ、そうなんですか!
確かにPMGでやってもおかしくない曲だと思いますが、作曲者のクレジットはライル単独ですね。PMGとして最初から共作を目指した曲ではないが、一度はPGMのレパートリーとして加えようと考えたことはあった、ということですね。へ~、知りませんでした。
情報ありがとうございました。ではまた!(^^)
投稿者 Kota : 2005年06月12日 23:31